SDGs経営で新規事業を創ろう 第1章:既存事業とSDGsの連携
第1章 既存事業とSDGsの連携
これまでの特集で「SDGs経営」は地域貢献や、ステークホルダーとのより深い理解を築き、ビジネスを発展・向上させるための戦略として、多くの中小企業にとって有効な手段になるということを紹介してきました。
経営の中心軸として「SDGs経営」を置くことは、今の時代に最適な取り組みと言えます。
中でも中小企業にお勧めしたいのは、SDGs経営を軸にして新規事業を創ることです。
国も補助金を出して新規事業の構築や、事業転換を推奨しています。
このチャンスにSDGs経営を軸にして新規事業の創出にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
既存事業の中からのSDGsとの結びつきを見つける
中小企業が新規事業を起こすのはカンタンではないことは多くの企業経営者が実感してることでしょう。
ましてや、SDGsで事業を起こすということであれば、頭を抱える人も少なくないと思います。
そこで、多くの企業はSDGsの取り組みを新規事業や新しいプロジェクトとして始める前に、既存の事業でSDGsへの貢献のヒントを探ることをお勧めします。
企業の中には既に持続可能性を追求している事業が数多く存在し、これをSDGsと結びつけることで、その価値をさらに高めることが可能です。
まずは、17のターゲットの中から自社の携わる業務の関連性や、取り組んでみたいことを選んでみましょう 。
既存事業とSDGsのシナジー
多くの企業の場合、自社の事業を改めて検証すると、SDGsの目標との関連性に気づくことも少なくないでしょう。
例えば、ある食品メーカーは、地域の農家と協力して環境負荷を低くした農産物の生産を行っています。
この取り組みはSDGsの「2. 飢餓をゼロに」「12. つくる責任 つかう責任」などの目標と直結しており、既存の事業の中にSDGsの要素が含まれています。
また、ある野球のグローブ製造メーカーのお話です。
通常1枚の革から4つのグローブを作っていたそうですが、これまで穴が開くなどした皮は廃棄していました。
これはもったいないと工夫して3つのグローブを作って、家が貧しく グローブが買えない子どもたちに安く作って提供する事業を行いました。
捨てるものを有効活用し、なおかつ 喜ばれる製品として活用した、まさに SDGs経営を実践した事業と言えるでしょう。
すでに中小企業では行っている場合も多く、これって「SDGsだったんだ」と気づくこともあるでしょう。
そこをヒントに切り口を探すのもひとつの手です。
既存事業とSDGsを結びつけることは、単に社会的価値を高めるだけでなく、ビジネスの競争力を向上させるための一歩にもなります。
持続可能性を追求する中で、自社の事業がどのような役割を果たしているのかを再確認し、その価値を最大限に引き出すことが求められます。
事業ラインナップのSDGsとの整合性を探索するヒント
①事業の棚卸し
まずは、自社の事業全体を洗い出します。
何を目的として、どのようなサービスや商品を提供しているのか、全体像を把握することから始めます。
②関連づけ
事業とSDGsの目標を一致させ、どの事業がどの目標に貢献しているのか、また、どの事業が新たにどの目標に取り組むことができるのか、ピックアップします。
③ステークホルダーとの対話
SDGsの取り組みに関して、ステークホルダーとの対話を深めることで、更なるシナジーの発見や事業の方向性を見直す手助けになります。
④SDGsの17の目標を理解
各目標とその具体的な内容を深く理解することで、どの目標に自社の事業が寄与しているのかが見えてきます。
SDGsウォッシュに気をつけよう
持続可能な開発目標(SDGs)が企業経営に取り入れられる中で、新しい問題が浮かび上がっています。
その名も「SDGsウォッシュ」です。
これは、企業がSDGsの名の下に、実際には持続可能性に貢献していない活動を行っているという問題です。
特に中小企業において、本気でSDGs経営を進めようとする際にはこの問題には特に注意が必要です。
SDGsウォッシュとは、企業が持続可能性や環境への貢献をうたいながら、実際にはそのような行動をとっていない、または不十分な場合に用いられる用語です。
これは企業の信頼性だけでなく、SDGsそのものの信頼性も損なう可能性があります。
中小企業が陥りやすい理由として、ひとつは資源が限られることです。
中小企業は、大企業に比べて資源が限られているため、SDGsに対する取り組みが表面的なものになりがちです。
二つ目はプレッシャーと認知度です。
ステークホルダーからのプレッシャーや、SDGsをキーワードにしたマーケティングの効果もあり、SDGsに名を連ねたいという気持ちが先行してしまいがちです。
SDGsウォッシュに陥らないための注意点と対策
①ゴールの明確化
どのSDGsの目標に取り組むのか、その目標が自社にとって何を意味するのかを明確にしましょう。
②実効性のあるアクションプラン
名ばかりのSDGs取り組みを避けるためには、具体的かつ実効性のあるアクションプランが必要です。
③透明性の確保
企業活動とSDGsの目標達成との関連性をしっかりと報告し、透明性を確保することが信頼構築につながります。
SDGsウォッシュは企業にとっても、そのステークホルダーにとっても、一歩間違えば大きな信用失墜を招く可能性があります。
真剣にSDGs経営を進めようとする中小企業は、この問題に特に注意を払い、真に持続可能な未来に貢献する活動を行うべきです。
それが真のSDGs経営の道と言えるでしょう。
次の記事はこちら